Q. |
原子力分野で働いておりますが、女性比率は非常に低いと実感しております。また、近年は少子化の影響か、男女問わず従来のような新卒採用が困難になっているとも感じており、多様な人材の活用についてヒントをいただければと思います。 |
A. |
(岡田先生)答えは一つ、強いリーダーシップです。 |
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Q. |
原子力におけるジェンダーギャップは長らく問題視されながら、改善は極めてゆるやかです。そこで2点伺わせていただきます。1. このまま改善しないことが原子力産業に及ぼす影響について教えてください。 |
A. |
(岡田先生)NEAでは、原子力の安全というカテゴリの中で、改善を進めています。私も同じ考えです。人間にはまだまだ未知の能力があると思っています。科学技術は人間の能力から生み出されるものです。人類の半分の女性の能力を引き出し、その能力を生かして、より安全な原子力を常に目指していけると思います。つまり、改善をしないままでいると科学技術産業や原子力産業に、少なくとも安全へのもっと新しい知恵を使う可能性を狭めてしまっているということになります。 |
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Q. |
先の質問の続きです。2.ジェンダーギャップの抜本的な改善策とその実現条件について教えてください。 |
A. |
(岡田先生)先ずは日本では強いリーダーシップが必要です。世界の原子力分野のジェンダーバランス改善に動き出したのはNEAのマグウッド事務局長や、IAEAグロッシー事務局長の強いリーダーシップです。そして、もう一つ、それらの男性リーダーの下のロールモデルの女性たちがボランティア精神で、将来の女性たちに向けて強いリーダーシップで支えているのです。この両方の力をかみ合わせなければなりません。改善策は男女問わず強いリーダシップです。 |
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Q. |
学生の皆さまに原子力分野への関心を高めていただければと思います。 |
A. |
(岡田先生)男女関係なく、原子力技術の魅力を入り口の段階でわかりやすく伝えることが大切です。子供を育てている親御さんも一緒に、その魅力に魅了されなければなりません。技術者や研究者が生き生き働いている姿とそれをわかりやすく説明する翻訳者が必要です。翻訳者も原子力技術に魅了されなければなりません。大学生には、技術者や研究者が生き生き働いている姿を見る機会を増やしてもらいたいです。学会の場でも学生と研究者の交流の機会を作ってもらいたいです。 |
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Q. |
日本の場合、原子力分野や原子力学会での女性の割合が非常に低い。原子力学会での女性の割合は、学生会員で約14%、正会員で約4%で、卒業後、原子力分野に就職していない傾向がうかがえます。女性比率を向上させる良い方法はないでしょうか? |
A. |
(岡田先生)企業で働いている女性には、企業や研究機関の側が学会で発表する機会を積極的に作ってほしいと思います。学会では、始めて発表する方が孤立(企業の仲間だけの中だけではなく)しないように、フォローが必要だと思います。受け皿がダイバーシティ推進委員会であったり、部会だったりしますが、フォローする仕組みを作ってもらいたいです。学生の場合は、いろいろ対策がされていると思いますが、卒業したあとの離脱を防がなければならないので、ここも、フォローする仕組みを作っていただきたいです。 |
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Q. |
ダイバーシティを進めることで、収益などの効果やメリットがあること、ご教示ください。 |
A. |
(岡田先生)社会が人類の能力(働き手としての能力も含め)の半分を失っていると思ってください。家庭や育児で培われた能力も、未知の能力としてみなしてもよいかもしれません。こういった能力を引き出すことは、メリットは大きいと思います。多様性ですから、女性というだけではありません。文化の違い、環境の違いで、人間の能力は違った形で能力を出すと思います。ダイバーシティを推進することは、新たな発見が多いと思っています。イノベーションの創出につながります。 (西村先生)原子力は、原子力ムラって揶揄されますよね。ダイバーシティーの推進はある意味でムラ社会を壊すことです。予定調和を良しとすることにも反することが多いし、組織を管理することも大変となります。しかし、革新的に若返ることで、組織の存在が社会に認知されるでしょう。文科省の寄附金サイトを見ても、ダイバーシティを推進するクラウドファンディングなどもあります。いろいろと知恵を出せば、具体的に収益改善を図ることも出来ると思います。 |
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Q. |
原子力委員会のWEBサイトでも世界的なダイバーシティへの動きが掲載されていました。興味深いです。 |
A. |
(岡田先生)このご意見は、OECD/NEAの活動やIAEAの活動を指しているのだと思います。日本もNEAの活動に参画しています。NEAの原子力分野のアンケート調査では、国の体制が異なっているので、一概に比較できないのですが、自由主義国の中でも日本は人的資源のアンケート調査で、どの項目でも非常に低いという結果になりました。とはいえ、8,000人の個人に向けられたアンケート調査では、どの国も同じような意見が寄せられています。例えば、原子力分野は女性に優しくない、昇進には出産育児は障壁にになっているなど、原子力特有なものと社会的な課題とが相まっています。少しでも女性に優しい社会環境づくりが必要だと、多くの国々の方々が思っています。 |
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Q. |
国内の他の業界と同じようなことが起こっているのでしょうか? |
A. |
(岡田先生)国内の他の産業も同じ動きがあります。皆さんの会社でも、特に国の女性活躍推進法を受けて、少し変わってきていると思います。しかし、動きが少ないのが工学系産業です。大学も工学系分野が遅れています。「そもそも女性がいない」という声の元、改革が進んでいません。鶏と卵問題で、女性がいなくても、準備はするという必要があると私は思っています。その準備は、男性にも優しいはずです。それが、チェレンジする新しい工学系の卵を産みます。原子力は総合科学分野と謳うのであれば、先陣を切って、女性の場を女性の優しい環境を作って、待ってますと広く伝えることも必要かと思います。 |
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Q. |
岡田先生はリーダーになりうると思いますか?リーダーに必要な特性をご説明いただきたいです。 |
A. |
(岡田先生)リーダに必要な特性についてですが、物事の段階(進み方成熟度)でリーダに要求される特性は異なると思います。原子力産業は成熟した産業で、安全に向けたたゆまぬ努力が必要という段階なのだと、私は思っています。それぞれの技術は分割されて議論されていますが、俯瞰するリーダが必要なのだと思っています。ところが、ジェンダーバランスに関しては、実は黎明期です。こういったときのリーダの特性は、先頭に立って号令をかける人かな、と思います。そういった意味では、今の私の地位はリーダの旗振りができます。そういうつもりでウェビナーのとき、僭越ながら回答しました。 |
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Q. |
責任感が肥大になっている、ということはありますか? |
A. |
(岡田先生)責任感の肥大とは、ウェビナーでは、よく理解ができませんでした。今もよくわかりません。ただ、若い人には責任感は年齢とともに積み重ねてほしいと思います。さらに、結果を早急に求めないでほしいと思います。そう考えると、社会も段階を踏んだ(成長段階に応じた)責任を求めてほしいと思います。肥大化は良くないです。 |
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Q. |
定年後も引き続き経験や知識を活かせる人は少ないように思います。もっと多くの人が定年後も活躍できるために必要な制度のアイデアがありましたら教えてください。また、リタイアは人それぞれでいいのではいかと思うこともあります。年齢で区切る必要性はなんでしょうか? |
A. |
(岡田先生)定年後も経験や知識を活かしたいと思っている人は多いと思います。ただ、その受け皿が少ないかもしれません。受け皿を用意する必要があります。研究所や企業を産学共同で、定年退職者の英知を結集プログラムなどもいいですね。その際、現役時代の役職など気にせず、ぜひ、謙虚にフラットな関係を築いてほしいです。 (西村先生)ウェビナーでは、明確に返事できませんでした。しかし、岡田先生の回答を読んでの想いとしては、受け皿やプログラムとして、ベンチャー育成があると思います。但し、ベンチャーといっても、ハイリスク・ハイリターンを求めるベンチャー制度ではなく、もっと穏やかなものが良いと思います。産業といっても、教育産業への貢献なら原子力分野の研究者や技術者なら適している人が多くいると思います。年齢での制限も緩いと思います。 |
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Q. |
体積のお話し、ありがとうございました。興味深いものでした。お子さんにお話しすると、お母さんとお父さんだと反応がいいのはどちらでしょうか?多様化にも関係しそうですが。 |
A. |
(西村先生)ありがとうございます。限られた予算と人員のもとで価値の立方体体積の最大化、というものが重要だということをお話ししました。個人も年齢を重ねていくにつれ、振り返るとそれぞれが価値の立方体の中に足跡を残していくと思います。お母さんとお父さんの反応に関しては、どちらも良いです。子供に話しかける時、その子がモジモジしないで、ハッキリと返事を返した時、お父さんもお母さんも嬉しそうに微笑みます。その子がべそをかいて答えられない時、「じゃぁ、お父さんに訊いてみようか?」といって、その子のお父さんに問いかけます。もちろん、お母さんの時もあります。ウランガラスの真空放電発光は、いろいろ多様に発展できる題材です。良く使います。 |